子どもの急病は、仕事の繁忙期や大切な予定がある日にも突然起こります。「今日はどうしても仕事を休めない」「職場に迷惑をかけたくない」と焦るのは、決して珍しいことではありません。
しかし、子どもの安全を確保しないまま出勤したり、一人で抱え込んだりすることは避ける必要があります。まず子どもの状態を確認し、そのうえで職場への連絡、休暇制度の利用、家族との交代、病児保育などを順番に検討しましょう。
この記事では、子どもの急病で仕事を休めないと感じたときの初動から、法律上の「子の看護等休暇」、病児・病後児保育の利用方法、産休・育休中から準備できる対策まで具体的に解説します。
子どもの急病で仕事を休めないときの最優先事項
最初に行うことは、仕事の調整ではなく、子どもの安全確認です。体温だけで判断せず、呼吸、意識、水分摂取、顔色、けいれんの有無などを確認してください。緊急性が高い場合は、勤務先への説明よりも受診や救急要請を優先します。
呼びかけへの反応が弱い、呼吸が苦しそう、唇の色が悪い、けいれんが続く、水分が取れず尿も出ていないなど、普段と明らかに異なる様子があるときは、速やかに医療機関や救急へ相談しましょう。判断に迷う場合は、全国共通の子ども医療電話相談「#8000」を利用できます。実施時間や対応地域は自治体によって異なるため、最新情報を確認してください。緊急性が高いと感じる場合は119番へ連絡します。
緊急性が低い場合は、次の順番で対応を整理すると混乱を減らせます。
- 子どもの症状と発症時刻を記録する
- 保育園や学校の登園・登校基準を確認する
- 勤務先へ早めに第一報を入れる
- 自分と配偶者・パートナーの予定を確認する
- 休暇、在宅勤務、遅刻・早退、病児保育などを検討する
- 必要に応じて医療機関を受診する
朝の時点で受診結果や回復時期が分からなくても、連絡を遅らせる必要はありません。「現時点では出勤が難しい」「受診後に改めて連絡する」と伝えれば、職場も代替要員や業務の優先順位を検討しやすくなります。
「仕事を休めない」と追い詰められやすい理由
仕事を休めないという悩みは、本人の段取り不足ではなく、職場と家庭の複数の事情が重なって生じます。特に復職直後は、子どもが集団生活で感染症にかかりやすく、短期間に何度も欠勤や早退が必要になることがあります。
よくある背景は次のとおりです。
- 担当業務を代われる人がいない
- 会議、納期、接客、出張など変更しにくい予定がある
- 復職直後で周囲に申し訳なさを感じている
- 有給休暇の残日数が少ない
- 配偶者・パートナーも休みにくい職場で働いている
- 祖父母が遠方にいる、または健康上頼れない
- 病児保育が満員、対象外、未登録で利用できない
- 子の看護等休暇が無給で、収入減が心配
こうした事情があっても、子どもを無理に登園・登校させると、症状が悪化したり、呼び出しによって仕事を途中で切り上げたりする可能性があります。感染症の場合は、周囲へ広げるおそれもあります。「出勤するか、丸一日休むか」の二択にせず、午前だけ休む、夫婦で途中交代する、在宅勤務へ切り替えるなど、複数の選択肢を組み合わせることが大切です。
また、休むことへの罪悪感と、制度上休めるかどうかは分けて考えましょう。職場への配慮は必要ですが、子どもの看護を一人で背負う必要はありません。まず就業規則と利用可能な制度を確認し、家族と職場に具体的な相談をすることが解決の第一歩です。
当日に検討できる仕事の調整方法
子どもの急病時は、休暇だけでなく、遅刻・早退、時間単位の休暇、在宅勤務、家族との交代を組み合わせて対応できます。勤務先によって利用条件が異なるため、使える選択肢を一つずつ確認しましょう。
休暇を取得する
年次有給休暇、子の看護等休暇、会社独自の育児目的休暇などが候補です。有給か無給か、時間単位で取得できるか、当日の申請が認められるかは制度によって異なります。就業規則、社内ポータル、人事・労務担当者への確認が必要です。
遅刻・早退や中抜きを相談する
午前中に受診し、午後から家族と交代できる場合は、終日の欠勤を避けられることがあります。フレックスタイム制を利用して始業・終業時刻を調整できる職場もあります。ただし、自己判断で勤務時間を変更せず、必ず上司や担当部署の承認を得ましょう。
在宅勤務へ切り替える
在宅勤務制度がある場合でも、看護をしながら通常どおり働くのは困難です。子どもの年齢や症状によっては、常に見守りが必要になります。「在宅なら休まなくてもよい」と無理をせず、会議を減らす、対応時間を限定する、休暇と併用するなど、実際に働ける範囲を伝えてください。
家族で時間帯を分担する
一方が午前、もう一方が午後を担当する方法なら、双方の欠勤時間を短くできる場合があります。どちらの仕事が重要かだけで毎回決めるのではなく、休暇残日数、収入への影響、直近の対応回数も含めて公平に判断することが大切です。
子の看護等休暇を利用できるか確認する
一定の要件を満たす労働者は、育児・介護休業法に基づく「子の看護等休暇」を申し出ることができます。子どもの病気やけがの世話、予防接種・健康診断などに対応するための休暇で、年次有給休暇とは別に設けられています。
2025年4月施行の改正では、対象となる子どもの範囲や取得事由が拡大され、名称も従来の「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に変更されました。原則として、小学校第3学年修了までの子どもを養育する労働者が対象です。病気やけがの看護のほか、感染症に伴う学級閉鎖等や、一定の入園・入学式、卒園式への対応も対象に含まれます。
法定の日数は、対象となる子どもが1人の場合は1年度につき5日、2人以上の場合は1年度につき10日が基本です。1日単位だけでなく、時間単位で取得できる仕組みもあります。ただし、業務の性質上、時間単位での取得が難しい業務については、労使協定により対象外となる場合があります。
子の看護等休暇を有給にすることは法律上、会社に一律で義務づけられているわけではありません。無給扱いの会社もあれば、独自制度によって有給としている会社もあります。また、週の所定労働日数などによって対象外となる場合があります。
制度の対象者、年度の区切り、申請方法、賃金の扱いは勤務先に確認してください。法改正や個別条件により取扱いが異なる可能性があるため、厚生労働省の案内など、必ず最新の公式情報を確認してください。
職場には早く、簡潔に、具体的に連絡する
子どもの急病が分かったら、対応方法が確定していなくても、まず上司や所定の連絡先へ第一報を入れましょう。早い連絡は、職場が代替対応を検討する時間を確保するためにも重要です。
連絡には、次の内容を含めると状況が伝わりやすくなります。
- 子どもの急病で出勤や通常勤務が難しいこと
- 休暇、遅刻、早退、在宅勤務のうち希望する対応
- 現時点で分かる不在時間
- 受診後など、次に連絡できる時刻
- 当日の重要業務と引き継ぎ先
- 緊急連絡に対応できるかどうか
例えば、「子どもが今朝から発熱し、受診と看護が必要なため、本日は子の看護等休暇を申請したいです。10時の会議資料は共有フォルダに保存済みで、進行は○○さんに相談します。受診後の12時ごろに明日以降の見込みを連絡します」と伝えます。
病名が確定していない段階で推測を伝えたり、必要以上に詳しい症状を説明したりする必要はありません。一方で、数日間休む可能性がある場合は、分かった時点で共有しましょう。引き継ぎ事項を普段から一覧化しておけば、急な欠勤時にも短時間で連絡できます。
申し訳なさから「自宅でいつでも対応できます」と約束すると、看護中に仕事ができず、さらに負担が増えることがあります。対応可能な時間や業務だけを具体的に伝え、できないことは明確にするのが安全です。会社指定の申請フォームや診療明細などの提出が必要な場合は、落ち着いてから人事・労務担当者に確認してください。
休めないときは病児・病後児保育も検討する
家族だけで対応できない場合は、自治体や医療機関、民間事業者が運営する病児・病後児保育が選択肢になります。ただし、急病当日に初めて探しても利用できないことがあるため、復職前の事前登録が重要です。
病児保育は、病気のため通常の保育園や学校へ行けないものの、入院治療までは必要ない子どもを一時的に預かるサービスです。病後児保育は、回復期にあるものの集団保育がまだ難しい子どもを対象とするのが一般的です。施設型のほか、看護師や保育者が自宅を訪問するサービスもあります。
利用時には、一般に次のような準備が必要です。
- 利用者情報の事前登録
- 利用希望日の予約
- 医療機関の受診や医師連絡票
- 健康保険資格を確認できるもの、医療証、母子健康手帳
- 薬、おむつ、着替え、食事など施設指定の持ち物
対象年齢、利用料金、予約開始時刻、キャンセル方法、食事提供の有無は施設ごとに異なります。感染症の種類、症状の重さ、隔離室の空き状況によっては利用できません。「登録済みだから必ず預けられる」とは限らないため、複数施設を候補にしておくと安心です。
自治体の病児保育は比較的利用しやすい料金に設定されていることがありますが、所得による減免や助成の条件は地域によって異なります。民間サービスの料金補助を設けている会社もあります。具体的な料金や対象条件は変わる可能性があるため、自治体、施設、勤務先の最新の公式情報を確認してください。
配偶者・家族との分担を「その場しのぎ」にしない
子どもの急病対応は、主に世話をする一人だけの責任にせず、家族の共通業務として分担を決めておきましょう。毎回、発熱した朝になってから交渉すると、時間がない中でお互いの仕事の重要性を競うことになり、負担が一方へ偏りやすくなります。
事前に共有しておきたい項目は次のとおりです。
- 曜日ごとの送迎・受診担当
- 第一連絡先と、つながらない場合の第二連絡先
- 互いの繁忙日、出張日、休暇を取りにくい日
- 有給休暇や子の看護等休暇の残日数
- かかりつけ医、診察券、薬の保管場所
- 保育園・学校や病児保育の連絡方法
- 祖父母などに頼る場合の条件と送迎方法
担当を決める際は、年収や役職だけで判断しないことが大切です。一方が休み続ければ、評価への不安や収入減だけでなく、疲労や孤立感にもつながります。「今月はどちらが何回対応したか」「今後の重要予定は何か」を定期的に確認し、偏りを修正してください。
祖父母へ依頼する場合も、年齢、持病、感染リスク、運転の可否を考慮する必要があります。高熱や感染力の強い病気を無理に任せるのは避けましょう。薬を預ける場合は、薬の名前、量、時間、注意点を口頭だけでなく書面でも伝えます。
ひとり親家庭や近くに頼れる人がいない家庭は、自治体のファミリー・サポート・センター、子育て支援サービス、訪問型病児保育なども確認してください。ただし、病気の子どもへの対応可否はサービスごとに異なります。
産休・育休中から復職後の急病に備える方法
復職前に「子どもは急に休むことがある」という前提で仕組みを整えると、当日の判断と職場への連絡が大幅に楽になります。保育園への入園準備だけでなく、急病時のバックアップまで復職計画に含めましょう。
勤務先の制度を確認する
就業規則や育児支援制度を読み、子の看護等休暇、時間単位年休、フレックスタイム、在宅勤務、短時間勤務、会社独自の有給休暇について確認します。制度名だけでなく、申請期限、連絡先、必要書類、無給時の給与控除方法まで把握しておくと安心です。
上司と復職面談を行う
復職面談では、保育園から呼び出しがあった場合の連絡方法、在宅勤務への切替可否、緊急時の引き継ぎ先を相談します。「迷惑をかけるかもしれない」と謝るだけではなく、業務資料の共有や担当の複数化など、自分からできる対策も伝えましょう。
病児保育を事前登録する
自宅や職場から通える施設を複数調べ、見学や登録を済ませます。予約方法、受診が必要な時間帯、対象外となる症状、当日の持ち物を確認し、すぐ持ち出せるよう一覧を作ってください。
仕事を属人化させない
進行中の案件、連絡先、締切、データの保存場所をチームで共有します。急な欠勤があっても、他の人が最低限の対応をできる状態にしておくことは、育児中の社員だけでなく、すべての職場にとってリスク管理になります。
復職直後から完璧に働こうとせず、子どもと家族の生活が安定するまで調整期間が必要だと考えましょう。
職場から休めないと言われた場合の対応
まずは「なぜ休めないのか」と「どの制度の申出が認められないのか」を切り分け、記録を残しながら確認してください。単に繁忙期だから難しいという話と、法定の休暇制度の利用を拒否されることは同じではありません。
子の看護等休暇を申し出たのに認められない場合は、対象となる子どもの年齢、自分の雇用形態、週の所定労働日数、労使協定による対象外の有無を確認します。契約社員やパート・アルバイトであることだけを理由に、一律に利用できないとは限りません。
次のような順序で対応するとよいでしょう。
- 就業規則と社内制度の案内を確認する
- 申出日、相手、回答内容をメールやメモで残す
- 上司に加えて人事・労務担当者へ確認する
- 休暇が難しい理由と代替案を尋ねる
- 解決しない場合は外部の相談窓口を利用する
休暇の申出や取得を理由とした解雇、減給、降格などの不利益な取扱いについては、法律上の制限があります。ただし、賃金の取扱いや個別の勤務状況によって判断が分かれることがあるため、具体的な問題は専門窓口へ相談してください。
外部の相談先には、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、総合労働相談コーナー、労働組合などがあります。制度内容は法改正により変わるため、厚生労働省の最新情報も確認しましょう。緊急時に職場と争うことへ力を使いすぎず、まず子どもの看護体制を確保し、制度上の問題は落ち着いてから整理する方法もあります。
子どもの急病と仕事に関するよくある質問
Q1. 子どもの発熱だけで仕事を休んでもよいですか?
発熱の程度だけでなく、年齢、全身状態、保育園・学校の基準、受診の必要性を踏まえて判断します。子どもを安全に預けられる人や施設がなく、看護が必要であれば、休暇の利用を検討してください。無理に登園させても、途中で呼び出される可能性があります。
Q2. 子の看護等休暇は当日でも申請できますか?
子どもの急病は事前予測が難しいため、当日の申出を想定した制度です。ただし、勤務先が定める連絡方法や事後手続きがあります。まず電話やチャットなど指定された方法で速やかに連絡し、必要書類については後から人事・労務担当者へ確認しましょう。
Q3. 子の看護等休暇を取得すると給与は減りますか?
法律上、子の看護等休暇を一律に有給とする義務があるわけではないため、会社が無給としている場合は給与が減る可能性があります。一方、会社独自に有給扱いとしているケースもあります。賞与や手当への影響を含め、就業規則と給与規程を確認してください。
Q4. 在宅勤務なら病気の子どもを見ながら働けますか?
軽い症状で子どもが安静に過ごせる場合は可能なこともありますが、看護と仕事を同時に行えるとは限りません。乳幼児、高熱、嘔吐などがある場合は見守りが必要です。在宅勤務と時間単位休暇を併用するなど、実際に勤務できる範囲を上司へ伝えてください。
Q5. 病児保育に預けることへ罪悪感があります
利用条件を満たし、子どもの状態に対応できる施設へ預けることは、仕事と育児を続けるための選択肢の一つです。ただし、子どもが不安定なときや緊急性が高いときは、預けることにこだわらず受診や家庭での看護を優先しましょう。利用後は子どもの様子を確認し、必要に応じて翌日の予定を調整してください。
子どもの安全を守りながら働き方を調整しよう
子どもの急病時に大切なのは、一人で無理に解決することではなく、安全確認、職場への連絡、制度の利用、家族や外部サービスとの分担を順番に進めることです。「休めない」と感じても、時間単位の休暇、遅刻・早退、在宅勤務、家族との交代、病児保育などを組み合わせられる場合があります。
まずは子どもの症状を確認し、必要なら受診や救急相談を優先してください。その後、勤務先へ早めに連絡し、子の看護等休暇や年次有給休暇など、利用できる制度を確認します。職場への影響を減らすためには、連絡を遅らせるよりも、現時点で分かる範囲を簡潔に共有することが有効です。
また、急病対応は復職してから考えるのではなく、産休・育休中から準備できます。夫婦の担当表を作る、病児保育へ登録する、診察券や医療証をまとめる、上司と緊急時の働き方を相談するなど、小さな準備を重ねておきましょう。
休暇制度の対象条件や賃金の扱い、病児保育の利用条件は、法改正、自治体、勤務先によって異なります。厚生労働省、自治体、勤務先の就業規則など、必ず最新の公式情報を確認したうえで、自分の家庭に合う対応方法を整えてください。





