育休中は、一定の条件を満たすと健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。免除を受けても将来の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われるため、育休を取得したことだけで年金が不利になるわけではありません。
ただし、免除は自動的に適用されるわけではなく、原則として勤務先が日本年金機構へ届出を行う必要があります。また、育休の開始日・終了日、月末時点での取得状況、育休期間の長さによって、免除される月や賞与保険料の扱いが変わります。
この記事では、育休中の社会保険料免除について、対象者、免除される期間、短期間の育休や賞与の扱い、会社への依頼方法、確認ポイントを整理します。制度改正や個別の勤務先の手続きによって扱いが異なる場合があるため、手続きの際は必ず最新の公式情報を確認してください。
育休中の社会保険料免除とは
育児休業を取得する健康保険・厚生年金保険の被保険者について、一定の条件を満たす期間の保険料が免除される制度です。免除の対象になるのは、原則として健康保険料と厚生年金保険料です。
通常、会社員の社会保険料は、本人負担分と会社負担分を合わせて納付します。育休中の免除が適用されると、対象期間については本人負担分だけでなく、会社負担分も納付する必要がなくなります。そのため、給与が支給されない育休期間に社会保険料だけが差し引かれ、手取りが大きく減るという負担を抑えられます。
免除を受けた期間も、健康保険の資格がなくなるわけではありません。健康保険の被保険者資格は原則として継続し、医療機関を受診する際の健康保険も利用できます。また、厚生年金については、免除期間が将来の年金額を計算するうえで保険料を納付した期間と同じように扱われます。
- 対象となる主な保険料:健康保険料、厚生年金保険料
- 免除される人:育児休業を取得する健康保険・厚生年金の被保険者
- 免除の手続き:原則として勤務先が年金事務所へ届出
- 免除の効果:本人負担分と会社負担分の双方が免除
- 年金への影響:免除期間は年金額の計算上、納付済み期間として扱われる
なお、ここでいう社会保険料免除は、雇用保険料や住民税がすべて免除されるという意味ではありません。税金や雇用保険料は別のルールで計算されるため、給与明細や会社の説明を分けて確認しましょう。
社会保険料免除の主な条件
育休を取得する本人が社会保険の被保険者であり、会社が所定の届出を行うことが基本的な条件です。正社員に限らず、勤務先で健康保険と厚生年金の加入対象となっているパート・アルバイトなども、育児休業を取得し、社会保険の被保険者であれば対象になる可能性があります。
具体的には、次のような点を確認します。
- 勤務先の健康保険と厚生年金に加入していること
- 法律上の育児休業、出生時育児休業、または制度上の対象となる育児休業を取得すること
- 育児休業の開始日と終了日が明確になっていること
- 勤務先が育児休業等取得者に関する届出を行うこと
産後パパ育休とも呼ばれる出生時育児休業も、社会保険料免除の対象になり得ます。ただし、一般の育児休業とは取得できる時期や申出方法が異なるため、会社には制度名と取得期間を正確に伝えることが重要です。
一方、会社の健康保険ではなく、国民健康保険に加入している人は、会社員向けの健康保険・厚生年金における育休中の免除制度とは扱いが異なります。自営業者、フリーランス、退職後に国民健康保険へ加入している人などは、同じ条件で免除されるとは限りません。
また、育休中に会社から給与や手当が支払われる場合でも、社会保険料免除の可否は単純に給与の有無だけで決まりません。育休の取得状況や期間、月単位の要件をもとに判定されます。雇用契約、育休の申出書、給与支給の有無が複雑なケースでは、会社の人事・労務担当者や年金事務所に確認してください。
制度の対象者や届出様式は改正されることがあります。自分が対象だと思っていても、勤務先の手続き状況によって給与から保険料が控除されることがあるため、必ず最新の公式情報と会社の案内を確認してください。
いつからいつまで免除される?対象期間の考え方
原則として、育休を開始した日の属する月から、育休を終了した日の翌日が属する月の前月までが免除対象です。ただし、育休の開始日・終了日が月の途中か月末かによって扱いが変わるため、カレンダーで確認する必要があります。
たとえば、4月10日に育休を開始し、5月20日に終了する場合、原則として4月分と5月分が免除対象になります。育休の終了日が5月20日であれば、終了日の翌日は5月21日です。そのため、終了日の翌日が属する5月の前月である4月までが基本的な対象期間、と考えたくなりますが、月途中の育休については一定日数以上取得した場合の特例があります。実際の対象月は、月内の育休取得日数を含めて判定する必要があります。
現在の制度では、月末時点で育休を取得していない場合でも、その月に一定日数以上の育休を取得していれば、月額保険料が免除される仕組みがあります。短期間の育休を取得する場合は、単に開始月と終了月だけを見るのではなく、各月の取得日数を確認しましょう。
月末に育休を取得している場合
育休期間が月末を含む場合、その月の保険料が免除されるかを判断しやすい代表的なケースです。たとえば、6月30日に育休を取得している状態であれば、6月分の月額保険料について免除の対象となる可能性があります。
月末を含まない短期育休の場合
月末を含まない育休でも、月内の取得日数が制度上の要件を満たせば、その月の月額保険料が免除される場合があります。出生時育児休業や分割取得を利用する場合は、複数の取得期間を合算できるか、会社の届出上どのように扱うかも確認しましょう。
育休終了日を変更した場合、免除の対象月も変わることがあります。延長・短縮・分割取得をしたときは、会社に変更後の日付を速やかに伝え、必要な届出をやり直してもらうことが大切です。月額保険料の免除期間に関する日数要件は制度改正の影響を受けるため、必ず最新の日本年金機構の案内を確認してください。
短期間の育休でも免除される条件
短期間の育休でも、月末時点で取得しているか、または月内の取得日数が所定の要件を満たしていれば、月額の社会保険料が免除される可能性があります。「数日しか休まないから対象外」とは限りません。
短期取得で特に注意したいのは、育休の開始日と終了日が同じ月にあるケースです。以前は、月末に育休を取得しているかどうかが大きな判断材料でしたが、制度改正により、月末をまたがない育休でも一定日数以上取得すれば月額保険料が免除される仕組みが設けられています。
たとえば、月の前半にまとまった日数の出生時育児休業を取得し、その後に勤務へ戻るケースでは、月末には働いていても、月内の取得日数によっては月額保険料の免除対象となる可能性があります。一方、要件に満たない日数の育休では、月末に取得していなければ免除されない可能性があります。
確認するときは、次の順番で整理するとわかりやすくなります。
- その月の育休開始日と終了日を確認する
- 月末時点で育休を取得しているか確認する
- 月末を含まない場合は、その月の育休取得日数を確認する
- 分割取得の場合は、制度上の合算方法を会社へ確認する
- 会社が年金事務所へ届出済みか確認する
なお、「暦日で数えるのか」「勤務日だけを数えるのか」「出生時育児休業を分割した場合にどう扱うのか」などは、取得制度や届出内容によって確認が必要です。自己判断で給与からの控除を止めることはできません。育休の申出時に、社会保険料免除の対象月も合わせて会社へ確認しておきましょう。
短期の育休を予定している人は、育児休業申出書に記載した期間と、実際の取得期間を一致させることも重要です。急な変更があった場合は、終了日変更の手続きを行わないと、免除期間の情報が給与計算や年金記録に正しく反映されないことがあります。
賞与にかかる社会保険料は免除される?
賞与の社会保険料は、月額保険料とは別の条件で免除されます。育休を取得している月に賞与が支給されるだけでは、必ず免除されるとは限りません。賞与保険料については、育児休業の取得期間が一定の長さに達していることなど、月額保険料とは異なる要件があります。
月額保険料は、月末時点での育休取得や月内の取得日数が主なポイントになります。一方、賞与保険料は、賞与が支給される月に育休を取得していることに加え、育休の期間が一定期間を超えているかどうかが確認事項となります。短期間の出生時育児休業では、月額保険料は免除されても、賞与保険料は免除されないケースがあるため注意が必要です。
たとえば、賞与の支給日が6月中で、6月に育休を取得していたとしても、育休期間が賞与保険料の免除要件を満たさなければ、賞与から健康保険料や厚生年金保険料が控除される可能性があります。反対に、要件を満たしている場合は、賞与にかかる本人負担分が免除されることがあります。
賞与の免除については、次の項目を会社へ確認しましょう。
- 賞与の支給月
- 賞与の計算期間と支給日
- 育休の開始日と終了日
- 賞与保険料の免除に必要な育休期間
- 勤務先が賞与に関する届出を行うか
賞与保険料の免除要件は、月額保険料よりも誤解が生じやすい分野です。賞与の支給日、育休の期間、制度改正の時期によって判定が異なることがあるため、具体的な日付を伝えて確認してください。金額や免除要件を最終的に判断する際は、必ず最新の日本年金機構の公式情報と勤務先の給与担当者の案内を確認してください。
免除の手続きは誰が、いつ、どこに行う?
原則として、本人ではなく勤務先が「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構へ提出します。本人は、育休の取得期間を会社へ申し出て、社会保険料免除の手続きも希望することを伝えます。
一般的な流れは次のとおりです。
- 本人が会社へ育児休業の取得を申し出る
- 会社が育休の開始日・終了日、対象となる子どもの情報などを確認する
- 会社が育児休業等取得者申出書を作成する
- 会社が日本年金機構へ届出する
- 給与計算や賞与計算に免除内容が反映される
提出先は、勤務先を管轄する年金事務所などです。電子申請や郵送による提出が利用される場合もあり、本人が直接年金事務所へ行かなくても手続きできるのが通常です。健康保険組合に加入している会社では、健康保険に関する手続きの案内が別に行われることがありますが、厚生年金の届出を含めた具体的な窓口は勤務先へ確認してください。
手続きのタイミングは、育休の開始前後に会社が案内することが多いものの、会社の運用によって異なります。育休を申し出た時点で、「社会保険料免除の届出はいつ行うのか」「給与明細にはいつ反映されるのか」「賞与分も確認してもらえるのか」を聞いておくと安心です。
育休期間を変更した場合
育休を延長、短縮、分割した場合は、当初の届出内容と実際の取得期間が変わります。会社へ変更を伝えるだけでなく、社会保険料免除の届出についても変更や終了の手続きが必要になることがあります。
会社が手続きをしていない場合
給与から社会保険料が控除されている場合は、まず会社の人事・労務担当者へ、育休中の免除届出が提出済みか確認してください。会社側の処理漏れや、育休期間の登録誤りが原因である可能性があります。解決しない場合は、勤務先を管轄する年金事務所へ相談すると、必要な確認先を案内してもらえる場合があります。
給与明細や年金記録で確認するポイント
免除が正しく反映されたかは、給与明細だけでなく、会社の届出状況と年金記録を確認することが大切です。育休中は給与自体が支給されないことも多く、免除が反映されているか見落としやすいためです。
給与が支給される月には、健康保険料と厚生年金保険料の控除欄を確認します。ただし、社会保険料は前月分を翌月の給与から控除する会社もあり、育休を開始した月の給与明細ですぐに変化が出るとは限りません。給与の締め日・支払日・保険料の控除月は勤務先ごとに異なります。
確認する項目は次のとおりです。
- 育休開始月と終了月の保険料が控除されているか
- 月末を含まない短期育休について、月額保険料の免除が反映されているか
- 賞与支給月に賞与保険料が控除されているか
- 育休期間の変更後に、免除期間も修正されているか
- 復職月以降の保険料控除が適切に再開されているか
免除対象のはずなのに保険料が引かれている場合、すぐに「免除されていない」と決めつけず、控除の対象月を確認しましょう。会社が前月分を翌月に控除している、育休の開始日が届出と異なる、給与計算の反映が次回に繰り越されている、といった可能性があります。
反対に、免除対象外の月まで控除されていない場合は、後日会社から精算を求められることもあります。給与明細に疑問があれば、育休の取得期間がわかる書類と給与明細を手元に置き、会社へ具体的に問い合わせてください。
将来の年金記録は、ねんきんネットなどで確認できる場合があります。記録の反映時期には時間がかかることがあるため、すぐに表示されなくても慌てず、一定期間後に確認しましょう。表示内容に疑問がある場合は、年金事務所へ相談してください。
社会保険料以外に免除されないもの
育休中に免除される社会保険料と、税金やほかの費用は別制度です。住民税や雇用保険料が自動的にすべて免除されるわけではありません。育休中の家計を考えるときは、給与が減る一方で継続する支払いを確認しておく必要があります。
住民税
住民税は、原則として前年の所得をもとに課税されます。そのため、現在育休中で給与が少ない、または給与がない場合でも、前年に所得があれば住民税の支払いが必要になることがあります。会社が給与から天引きできない場合は、普通徴収に切り替わり、自分で納付する扱いになることもあります。
所得税
所得税は、その年の給与などに応じて計算されます。給与の支給がなければ所得税の源泉徴収がないこともありますが、育児休業給付などの給付金の課税関係は別に確認が必要です。育児休業給付は一般に雇用保険の給付として扱われますが、制度や税務上の扱いについては最新の公式案内を確認してください。
雇用保険料
雇用保険料は、原則として賃金を支給する場合に賃金額をもとに計算されます。社会保険料の免除制度とは別の仕組みなので、給与や賞与が支給される場合は会社の計算方法を確認しましょう。
保育料や家賃などの支出
保育料、住宅ローン、家賃、団体保険、財形貯蓄などは、社会保険料免除とは関係なく継続する場合があります。育休中は育児休業給付の支給時期と住民税の納付時期がずれることもあるため、免除されるものと支払いが続くものを一覧にしておくと、資金不足を防ぎやすくなります。
夫婦で育休を取る場合や復職時の注意点
夫婦それぞれが勤務先の社会保険に加入し、育児休業を取得する場合は、原則としてそれぞれの勤務先で免除の手続きを確認します。配偶者が育休を取得したからといって、自分の社会保険料免除が自動的に決まるわけではありません。
夫婦で取得時期をずらす場合や、出生時育児休業と通常の育児休業を組み合わせる場合は、本人ごとに開始日・終了日が異なります。保険料の免除月もそれぞれ変わる可能性があるため、夫婦それぞれが勤務先へ届出状況を確認しましょう。
復職すると、原則として社会保険料の控除が再開します。ただし、復職後に勤務時間が短くなり、給与が育休前より下がる場合は、一定の要件を満たせば標準報酬月額を見直す制度や、将来の年金額に配慮するための特例が利用できることがあります。これは育休中の保険料免除とは別の手続きです。
復職後に確認したい制度には、次のようなものがあります。
- 育児休業等終了時の標準報酬月額変更
- 養育期間の標準報酬月額特例
- 短時間勤務に伴う給与・社会保険料の変更
- 復職月の給与から控除される保険料の対象月
復職後の標準報酬月額変更は、給与が下がれば必ず適用されるものではなく、勤務時間、給与の変動、会社の届出など複数の条件があります。利用できるかどうかは、復職前に会社の人事・労務担当者へ確認しておくと安心です。
また、復職日が月の途中の場合、復職月の社会保険料がどのように計算されるか疑問を持つ人もいます。月額保険料は日割りではなく月単位で扱われることが多いため、育休の終了日と復職日、月末時点の資格状況を踏まえて判断されます。個別の給与計算は勤務先へ確認してください。
育休中の社会保険料免除でよくある質問
Q1. 育休を取れば社会保険料は自動的に免除されますか?
いいえ、原則として勤務先による届出が必要です。育休を取得すること自体が免除の前提になりますが、届出が行われなければ給与計算や年金記録に反映されません。育休の申出時に、社会保険料免除の届出も行うか、提出時期と反映時期を会社へ確認してください。
Q2. 育休中は健康保険が使えなくなりますか?
いいえ、社会保険料が免除されても、健康保険の被保険者資格がなくなるわけではありません。通常は健康保険を継続して利用できます。ただし、退職、契約終了、勤務先の社会保険資格喪失など別の事情がある場合は扱いが変わります。
Q3. 1週間程度の短い育休でも免除されますか?
短期間でも、月末時点での取得状況や月内の取得日数などの要件を満たせば、月額保険料が免除される可能性があります。ただし、賞与保険料は別の要件で判定されるため、月額保険料が免除されても賞与分まで免除されるとは限りません。取得する具体的な日付を会社へ伝えて確認してください。
Q4. 育休中に住民税も免除されますか?
原則として、育休中の社会保険料免除だけで住民税が免除されることはありません。住民税は前年の所得をもとに課税されるため、育休中に納付書が届く場合があります。納付方法や減免の可能性は自治体ごとに異なるため、市区町村へ確認しましょう。
Q5. 会社が社会保険料を控除している場合はどうすればよいですか?
まず、給与の締め日・支払日と、控除された保険料が何月分かを確認します。そのうえで、会社の人事・労務担当者へ、育休の届出と社会保険料免除の届出が提出済みか問い合わせてください。処理漏れや期間変更の反映漏れであれば、会社が訂正や精算を行うことがあります。解決しない場合は、勤務先を管轄する年金事務所へ相談してください。
育休前に確認したいチェックリスト
育休開始前に取得期間と免除の見込みを確認しておくと、給与や賞与の控除に関する不安を減らせます。特に月末を含まない短期育休や、賞与支給月と重なる育休では、日付の確認が重要です。
- 自分が健康保険・厚生年金の被保険者か
- 育休の正式な開始日と終了日が決まっているか
- 出生時育児休業か、通常の育児休業か
- 分割取得や延長の予定があるか
- 月末時点で育休を取得しているか
- 月末を含まない場合、月内の取得日数が要件を満たすか
- 賞与の支給月と育休期間が重なるか
- 会社が社会保険料免除の届出を行う時期
- 給与明細に免除が反映される時期
- 住民税など免除されない支払いをどう納付するか
会社へ質問するときは、「育休中の社会保険料は免除されますか」だけでなく、「何月分が免除されますか」「賞与保険料は対象ですか」「届出はいつ提出されますか」「復職月はいつから控除が再開しますか」と具体的に聞くと、回答を得やすくなります。
育休中の社会保険料免除は、手取りや家計に関わる重要な制度です。条件を満たしているのに控除されているように見える場合も、会社の計算時期や届出の反映時期によることがあります。取得期間がわかる書類、給与明細、賞与明細を保管し、疑問点は早めに勤務先へ確認しましょう。
なお、免除期間、短期育休の日数要件、賞与保険料の扱い、届出書類は、法改正や加入している制度によって変更される場合があります。最終的な判断は、必ず日本年金機構、加入する健康保険者、勤務先の人事・労務担当者などの最新の公式情報で確認してください。





