育児時短就業給付金は、2歳未満の子どもを養育するために所定労働時間を短縮して働く人を対象に、時短勤務による賃金の減少を補う制度です。原則として、時短勤務中に支払われた賃金の10%相当額が支給されます。
ただし、誰でも一律に賃金の10%を受け取れるわけではありません。時短勤務前の賃金との比較による支給額の調整や、支給上限額、雇用保険の加入状況、子どもの年齢などの条件があります。この記事では、育児時短就業給付金がいくらになるのか、計算方法、対象者、申請手続き、よくある疑問をまとめて解説します。
制度の運用や上限額は改定される可能性があるため、実際に申請する際は、必ず最新の厚生労働省・ハローワークの公式情報を確認してください。
育児時短就業給付金はいくらもらえる?
育児時短就業給付金の支給額は、原則として支給対象月に支払われた時短勤務中の賃金の10%です。たとえば、支給対象月の賃金が20万円で、調整の対象にならない場合は、基本的な計算では2万円となります。
ただし、実際の支給額は「賃金×10%」で必ず確定するわけではありません。時短勤務前の賃金に近い水準の給与を受け取っている場合は、賃金と給付金の合計が時短勤務前の賃金を上回らないよう、給付率が下がったり、給付金が支給されなかったりすることがあります。
また、育児時短就業給付金には支給上限額があります。賃金が高い場合でも、計算上の給付金が上限額を超えて支給されることはありません。上限額は毎年変更される可能性があるため、以下の計算例は仕組みを理解するための目安として確認してください。
- 時短勤務中の賃金が15万円の場合:基本計算は1万5,000円
- 時短勤務中の賃金が20万円の場合:基本計算は2万円
- 時短勤務中の賃金が25万円の場合:基本計算は2万5,000円
なお、ここでいう賃金には、原則として支給対象期間に支払われた賃金を用います。毎月の給与だけでなく、手当や残業代などの扱いが関係する場合があるため、自分で計算した金額とハローワークの判定が異なることもあります。
育児時短就業給付金の計算方法
基本的な計算方法は、支給対象月の賃金額に給付率を乗じるという考え方です。通常は賃金の10%が基準になりますが、時短勤務前の賃金に対する時短勤務後の賃金の割合によって、給付率が調整されます。
計算の流れは、次のとおりです。
- 育児時短就業給付金の支給対象になる月を確認する
- その月に支払われた時短勤務中の賃金を確認する
- 時短勤務開始前の賃金と比較する
- 原則の給付率で計算する
- 支給上限額や給付率の調整を反映する
単純計算で10%になるケース
時短勤務を始めたことで賃金が大きく下がり、給付金と賃金を合計しても時短勤務前の賃金を上回らない場合は、原則どおり賃金の10%相当額が支給されます。
たとえば、時短勤務中の賃金が18万円であれば、基本計算は1万8,000円です。この場合、給与18万円と給付金1万8,000円を合わせた額が、時短勤務前の賃金を超えないかどうかを確認します。
給付率が調整されるケース
時短勤務中の賃金が時短勤務前とほとんど変わらない場合は、給付金が減額されることがあります。制度は、時短勤務によって生じる賃金の減少を補うことを目的としているため、給与がほぼ減っていない場合に満額相当の給付を受ける仕組みではありません。
特に、勤務時間は短くなっていても、役職手当や資格手当などが維持されている場合、想定より給与が減少しないことがあります。給与明細だけで判断せず、ハローワークまたは勤務先の担当部署に確認しましょう。
給付率の具体的な調整方法や上限額は、制度改正や賃金日額の算定により変わる可能性があります。申請前には必ず最新の公式情報を確認してください。
支給額を左右する「時短勤務前の賃金」とは
育児時短就業給付金の支給額を確認するには、時短勤務中の賃金だけでなく、時短勤務を開始する前の賃金を把握する必要があります。基準となる賃金は、単純に直前の給与1か月分だけで決まるとは限りません。
雇用保険の給付では、原則として時短勤務開始前の一定期間に支払われた賃金をもとに、賃金日額などを算定します。育児休業から復職してすぐ時短勤務を始める場合は、育児休業開始前の賃金が基準となることがあります。
そのため、次のような事情がある人は、計算が複雑になる可能性があります。
- 育児休業を取得してから時短勤務で復職する
- 産休・育休前と復職後で基本給が変わっている
- 固定手当や役職手当が変更されている
- 欠勤、休職、休業などで賃金の支払いがない月がある
- 賞与や一時金が支給されている
- 復職後に残業代や在宅勤務手当が発生している
また、通勤手当や賞与など、給付の算定上の賃金に含まれるかどうかが項目ごとに異なる場合があります。会社の給与担当者に確認するときは、「育児時短就業給付金の申請に使う賃金額を確認したい」と伝えると、必要な情報を整理してもらいやすくなります。
育児時短就業給付金の対象者
対象になるには、主に雇用保険の被保険者であること、2歳未満の子どもを養育していること、育児のために所定労働時間を短縮して就業していることなどの条件を満たす必要があります。
一般的な対象要件には、次のようなものがあります。
- 雇用保険に加入していること
- 2歳未満の子どもを養育していること
- 育児のための所定労働時間短縮を行っていること
- 一定の雇用保険加入期間など、受給資格に関する要件を満たすこと
- 支給対象月に就業していること
- 支給対象月の賃金が制度上の基準を満たしていること
正社員だけでなく、雇用保険に加入している一定の条件を満たすパートや契約社員も対象になり得ます。一方で、雇用保険に加入していない人や、単に会社を休んでいるだけで時短勤務をしていない人は、原則として対象外です。
なお、育児休業を取得せずに復職した人だけでなく、育児休業から復職して時短勤務を始めた人も対象になり得ます。ただし、育児休業給付との関係や、同じ子どもについて過去に育児時短就業をしていた期間がある場合など、個別の確認が必要です。
雇用形態や会社の制度上の時短勤務の扱いによって判断が分かれるため、対象になるか迷う場合は、勤務先を管轄するハローワークに相談してください。
いつからいつまで支給される?
育児時短就業給付金は、原則として子どもが2歳になるまでの育児時短就業期間が支給対象です。ただし、時短勤務を始めた日、子どもの誕生日、育児休業からの復職日、退職日などによって、対象となる期間が変わります。
たとえば、子どもが1歳の時点で時短勤務を始めた場合、条件を満たしていれば、原則として2歳になるまでの期間が対象になります。一方、2歳の誕生日を過ぎてから始めた時短勤務は、この給付の対象になりません。
次のような場合は、支給が終了する可能性があります。
- 子どもが2歳になった
- 時短勤務を終了して通常勤務に戻った
- 退職して雇用保険の被保険者でなくなった
- 育児以外の理由で勤務時間を短縮している
- 支給要件を満たさない月が生じた
なお、月の途中で時短勤務を開始または終了した場合は、支給対象となる期間や賃金の扱いが通常の月と異なることがあります。復職日や時短勤務の開始日は、会社の人事担当者と事前に確認しておくと安心です。
支給対象期間や申請期限は個別の事情によって異なるため、必ず最新のハローワークの案内で確認してください。
申請方法と必要書類
育児時短就業給付金の申請先は、原則として事業所を管轄するハローワークです。多くの場合、勤務先が本人に代わって申請しますが、本人が手続きを行うこともできます。
勤務先が申請する場合
勤務先が申請する場合は、会社が時短勤務の開始日、賃金額、出勤状況などを確認し、必要書類をそろえてハローワークへ提出します。本人は、会社から求められた書類や情報を提出します。
申請に必要となる可能性がある書類は、次のとおりです。
- 育児時短就業給付受給資格確認票
- 育児時短就業給付支給申請書
- 賃金月額証明書
- 出勤簿やタイムカードの写し
- 賃金台帳や給与明細の情報
- 母子健康手帳など子どもの年齢を確認できる書類
- 振込先の金融機関口座を確認できる書類
必要書類は申請方法やハローワークの確認内容によって異なります。会社から書類の提出を求められた場合は、提出期限に遅れないようにしましょう。
本人が申請する場合
会社が申請を行わない場合や、本人が直接手続きを希望する場合は、本人申請ができることがあります。ただし、賃金台帳や出勤簿など、会社が作成・保管している書類が必要になる場合があるため、事前に勤務先と連携することが重要です。
会社が制度を把握していない場合は、厚生労働省の案内を共有したうえで、人事・総務担当者に確認してください。申請できるかどうかや期限を自己判断で放置せず、早めにハローワークへ相談しましょう。
支給される時期と申請期限
育児時短就業給付金は、申請してすぐに振り込まれるとは限りません。ハローワークが受給資格、勤務実態、賃金額などを確認した後、支給決定が行われ、指定した口座に振り込まれます。
一般的には、会社が給与の支払い状況を確定した後に申請するため、時短勤務を始めた月から実際の振込まで一定期間かかります。申請書類に不備がある場合や、ハローワークから追加資料を求められた場合は、さらに時間がかかることがあります。
申請時には、次の点を確認しておきましょう。
- 初回申請をいつ行うのか
- 2回目以降の申請時期はいつか
- 会社が申請するのか本人が申請するのか
- 申請に必要な給与資料はそろっているか
- 申請期限を過ぎていないか
- 支給決定通知書を受け取れるか
支給申請には期限があります。期限を過ぎると申請できなくなる可能性があるため、復職後に会社から案内がない場合は、自分から人事担当者に確認することをおすすめします。具体的な申請期限は、最新の公式案内または管轄ハローワークで確認してください。
育児休業給付金や給与との違い
育児時短就業給付金は、育児休業中に受け取る育児休業給付金とは別の制度です。育児休業給付金は原則として休業している期間を対象とするのに対し、育児時短就業給付金は、復職後に時短勤務をしている期間を対象とします。
| 項目 | 育児休業給付金 | 育児時短就業給付金 |
|---|---|---|
| 主な対象期間 | 育児休業中 | 育児のための時短勤務中 |
| 就業の状態 | 原則として休業 | 勤務時間を短縮して就業 |
| 目的 | 休業中の所得を補う | 時短勤務による賃金減少を補う |
| 申請先 | ハローワーク | ハローワーク |
育児休業から復職して時短勤務を始めた場合、育児休業給付金は復職前までで終了し、その後の条件を満たせば育児時短就業給付金の対象になります。両方を同じ期間について重ねて受給する制度ではありません。
また、給付金は会社から支払われる給与とは異なり、雇用保険から支給されます。給与明細への記載方法や振込時期も会社の給与とは異なるため、入金がない場合は会社の給与担当者とハローワークの双方に確認するとよいでしょう。
育児時短就業給付金で注意したいポイント
育児時短就業給付金を受け取るには、時短勤務をしているだけでなく、制度上の要件を満たしている必要があります。特に、勤務時間の短縮理由、子どもの年齢、雇用保険の加入状況、賃金額、申請期限は必ず確認してください。
会社独自の時短勤務制度だけでは足りないことがある
会社の就業規則に時短勤務制度があっても、育児以外の理由で勤務時間を短縮している場合は対象外となる可能性があります。介護、病気、本人の都合などが理由の場合は、育児時短就業給付金の対象とは扱われません。
残業をした月は確認が必要
時短勤務中に残業した場合、勤務実態や賃金額に影響します。時短勤務そのものを継続していても、残業代によって賃金が増え、給付額が調整される可能性があります。残業が多い月は、給与明細と勤務記録を保管しておきましょう。
給付金には税金や社会保険料の扱いも確認する
給付金の税務上の扱いは、給与とは異なります。給与所得として扱われるか、社会保険料の算定に含まれるかなど、疑問がある場合は税務署、年金事務所、勤務先の担当部署などに確認してください。
給付金だけで家計を組まない
支給額は毎月一定とは限りません。給与額の変動、勤務日数、欠勤、残業、上限額の変更などで支給額が変わる可能性があります。家計を計画するときは、給付金を満額受け取れる前提にせず、支給決定後の金額を基準に調整しましょう。
いくらもらえるか確認するためのチェックリスト
自分の育児時短就業給付金がいくらになるか確認するには、次の順番で情報を整理するとスムーズです。
- 子どもの誕生日と2歳になる日を確認する
- 育児のために時短勤務を開始した日を確認する
- 雇用保険に加入しているかを確認する
- 時短勤務前の賃金が分かる給与明細を用意する
- 時短勤務後の各月の給与額を確認する
- 残業代、手当、欠勤控除の有無を確認する
- 会社が申請するか、本人が申請するかを確認する
- 申請期限と必要書類を確認する
簡易的な目安を知りたい場合は、「時短勤務中の賃金×10%」で計算できます。ただし、これはあくまで原則的な計算です。時短勤務前の賃金との比較、支給上限額、対象外となる賃金の扱いなどによって、実際の支給額は変わります。
会社に確認するときは、「時短勤務後の賃金額」「時短勤務前の基準賃金」「支給対象月」「申請予定日」を聞くと、金額の見通しを立てやすくなります。会社から明確な回答が得られないときは、給与明細や雇用保険被保険者番号などを準備して、管轄ハローワークに相談してください。
育児時短就業給付金に関するよくある質問
Q1. 育児時短就業給付金は毎月いくらもらえますか?
原則として、支給対象月に支払われた時短勤務中の賃金の10%相当額です。ただし、時短勤務前の賃金との比較による調整や支給上限額があるため、実際の支給額は人によって異なります。給与がほとんど減っていない場合は、給付率が下がる、または支給されないことがあります。
Q2. パートや契約社員でも対象になりますか?
雇用保険に加入しており、その他の受給要件を満たしていれば、パートや契約社員でも対象になる可能性があります。雇用形態だけで判断せず、雇用保険の加入状況、勤務時間、子どもの年齢、時短勤務の理由などを確認してください。
Q3. 育児休業を取らずに時短勤務をしても対象ですか?
育児休業を取得していない場合でも、育児のために所定労働時間を短縮して働き、その他の要件を満たしていれば対象になる可能性があります。ただし、雇用保険の加入期間など別の条件があるため、勤務先またはハローワークで確認してください。
Q4. 会社が申請してくれない場合はどうすればよいですか?
まずは人事・総務担当者に、育児時短就業給付金の申請を希望していることを伝えましょう。会社が申請を行わない場合でも、本人申請が可能なケースがあります。賃金台帳や出勤簿など会社の協力が必要な書類もあるため、早めに管轄ハローワークへ相談してください。
Q5. 給付金はいつまで受け取れますか?
原則として、2歳未満の子どもを養育するために時短勤務をしている期間が対象です。ただし、子どもが2歳になった場合、時短勤務を終了した場合、退職した場合などは支給が終了する可能性があります。個別の終了時期は、支給決定通知やハローワークの案内で確認してください。
まとめ:まずは「賃金の10%」を目安に公式確認を
育児時短就業給付金は、原則として時短勤務中の賃金の10%相当額が支給される制度です。ただし、時短勤務前の賃金との比較、給付率の調整、支給上限額、雇用保険の加入状況、子どもの年齢などによって、実際の金額や受給の可否は変わります。
まずは「時短勤務中の賃金×10%」で目安を計算し、その後に時短勤務前の賃金、支給対象月、申請期限を確認しましょう。会社の担当者には、申請の有無だけでなく、申請時期と必要書類も確認することが大切です。
制度の給付率、上限額、対象要件、申請期限は変更される可能性があります。最終的な支給額を判断するときは、必ず最新の厚生労働省・ハローワークの公式情報を確認し、必要に応じて勤務先または管轄ハローワークへ相談してください。





