妊娠初期に仕事を続けるときは、「妊娠前と同じように働けるか」ではなく、「今の体調で無理なく続けられる働き方になっているか」を確認することが大切です。
妊娠初期は、外見からは大きな変化が分からなくても、吐き気、眠気、だるさ、食欲の変化などによって、これまで当たり前にできていた通勤や仕事が急につらくなることがあります。一方で、体調の変化が比較的少なく、通常どおり働ける人もいます。
そのため、「妊娠初期だから仕事を休むべき」「妊娠していても普通に働くべき」と一律に考えることはできません。昨日は問題なく働けても、今日は朝から体調が悪いということもあります。周囲の妊娠経験と自分を比べるのではなく、その日の状態や仕事内容を見ながら調整することが重要です。
また、妊娠中の働き方には、単なる職場の好意だけではなく、法律上設けられている母性健康管理や母性保護の仕組みがあります。医師等から勤務に関する指導を受けた場合に会社へ伝える「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」もその一つです。
この記事では、妊娠初期に仕事を続ける人に向けて、日々の仕事で注意したいこと、通勤や仕事内容がつらい場合の考え方、会社への相談方法、利用できる制度まで具体的に解説します。
妊娠初期は仕事を続けても大丈夫?まず知っておきたいこと
妊娠初期だから一律に仕事をやめたり休んだりする必要はありませんが、体調に合わせて働き方を変えることは必要です。
妊娠が分かったとき、「仕事を続けたことで妊娠に影響しないだろうか」と不安になる人もいるでしょう。反対に、「まだ妊娠初期だから普通に働かなければ」と考え、つらくても無理をしてしまうこともあります。
しかし、仕事を続けられる状態かどうかは、妊娠週数だけでは判断できません。現在の体調、妊娠経過、仕事内容、勤務時間、通勤方法などによって状況は異なります。
妊娠初期の体調には個人差がある
妊娠初期に感じる体調変化の程度は人によって大きく異なります。
朝から強い吐き気がある人もいれば、夕方になると急に疲れる人、においに敏感になって職場にいること自体がつらくなる人、強い眠気で集中しにくくなる人もいます。
同じ人でも毎日同じ状態とは限りません。月曜日は通常勤務できたのに、火曜日は駅まで歩くだけでつらいということもあります。
そのため、「昨日できたから今日もできるはず」「同僚は妊娠中も休まなかったから自分も休まない」と考えないことが大切です。
特に体調について不安がある場合や、症状が強い・長引いている場合は、インターネット上の体験談だけで判断せず、医師や助産師などへ相談してください。
「今までどおり働くこと」にこだわらなくてよい
妊娠初期に必要なのは、仕事を続けるか辞めるかという二択ではありません。
始業時間を変更する、休憩を増やす、担当業務を見直す、残業を減らすなど、仕事を続けながら負担を小さくする方法もあります。
たとえば、朝につわりが強い人であれば、「フルタイム勤務ができない」とすぐに考えるのではなく、通勤する時間帯を変えることで負担を軽減できる可能性があります。立ち仕事がつらいのであれば、すべての仕事を休むのではなく、一時的に座ってできる業務へ変更できないか相談する方法もあります。
大切なのは、妊娠前の働き方を基準に自分を評価しないことです。妊娠中は体調に合わせて働き方を見直すことも、仕事を続けるための選択肢です。
妊娠初期に仕事を続けるときの7つの注意点
妊娠初期に仕事を続けるなら、「体調が悪くなってから我慢する」のではなく、あらかじめ負担になりやすい場面を把握しておくことが大切です。
特に次の7点は、毎日の働き方を見直すときのチェックポイントになります。
体調が悪い日は無理に出勤しない
朝起きた時点で体調が悪いにもかかわらず、「会社に迷惑をかけるから」と無理に出勤することは避けましょう。
通勤途中でさらに体調が悪化すれば、駅や電車内で動けなくなることも考えられます。また、出社してから仕事を続けられず、すぐに早退することになる場合もあります。
休む必要があるか、受診が必要かについて迷う場合は、医師等へ相談してください。職場には通常の欠勤連絡ルールに従って連絡します。
欠勤や遅刻が何度も続いている場合は、その都度「体調不良」とだけ伝えるのではなく、必要に応じて上司へ事情を説明し、一定期間の働き方を相談することも検討しましょう。
長時間の立ち仕事や身体的負担を見直す
販売、接客、製造、介護、保育、医療、建設などの仕事では、長時間立ち続けたり、身体を動かしたりする場面が多くあります。
妊娠前には問題なかった作業でも、妊娠後は疲れやすくなり、同じペースで続けることが負担になる場合があります。
「立ち仕事だから妊娠したら必ず休まなければならない」という意味ではありません。途中で座れるようにする、連続して立つ時間を短くする、身体的負担の小さい担当へ変更するなど、仕事内容そのものを調整できる可能性があります。
妊娠中の女性が請求した場合には、他の軽易な業務へ転換させることを使用者に求めることができる仕組みもあります。具体的な業務の負担については、医師等にも相談したうえで会社と話し合いましょう。
休憩を我慢しない
「周囲が忙しいから」「自分だけ休みにくいから」と、体調が悪くても休憩を我慢してしまうことがあります。
しかし、吐き気やだるさなどがある状態で無理を続けると、その日の後半に仕事を続けられなくなる場合もあります。
体調が悪くなったときにどこで休めるのか、誰に伝えればよいのかを確認しておきましょう。職場に休憩スペースがない場合は、空いている会議室など一時的に休める場所がないか相談する方法もあります。
また、医師等から妊娠中の休憩について具体的な指導を受けた場合には、会社はその指導を守れるよう必要な措置を講じることが求められます。
食事や水分を取りやすい環境を作る
妊娠初期は食欲やにおいの感じ方が変わり、これまでと同じ食事の取り方が難しくなることがあります。
勤務中の食事や水分については、体調と医師等の指示に従うことが前提ですが、「決められた昼休みまで何も口にできない」といった職場環境が負担になっている場合は、休憩方法について相談してみましょう。
接客業や現場仕事など、自由に飲食できない仕事もあります。その場合は、どのタイミングなら休憩できるのか、体調が悪くなったときは誰と交代するのかを事前に決めておくと安心です。
通勤がつらい場合は時間帯を見直す
仕事内容そのものより、通勤が一番つらいという人もいます。
朝の満員電車で長時間立つ、人混みやにおいで吐き気が強くなる、途中で体調が悪くなって何度も下車するなど、妊娠前には問題なかった通勤が大きな負担になることがあります。
始業時刻をずらせる職場であれば、混雑する時間帯を避けられないか相談してみましょう。医師等から通勤緩和について指導を受けた場合は、その内容を会社へ伝えて必要な措置を申し出る方法もあります。
残業・夜勤を無理に続けない
妊娠前から残業や夜勤をしていた人は、「今までやっていたから」と同じ働き方を続けてしまいがちです。
しかし、妊産婦が請求した場合、使用者は時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはならないと労働基準法で定められています。
特にシフト勤務では、勤務表が完成した後に変更すると周囲との調整が大きくなることがあります。今後、夜勤等の制限を希望する場合は、上司や人事へ早めに申請方法を確認しておくとよいでしょう。
急な体調変化に備えて仕事を共有する
妊娠初期から本格的な産休の引き継ぎを始める必要はありません。しかし、「今日突然休んでも最低限仕事が止まらない状態」を作っておくことは役立ちます。
たとえば、進行中の案件、今日対応する予定だった仕事、取引先への回答期限、資料の保存場所などを同僚や上司と共有します。
特に自分だけがパスワードや進捗を把握している業務がある場合は、会社のルールに沿って情報を整理しておきましょう。
これは産休のための引き継ぎではなく、妊娠初期に急な欠勤が必要になったときの備えです。
妊娠初期につらくなりやすい仕事の場面と対処法
妊娠初期の働きにくさは職種によって異なるため、自分の仕事のどこに負担があるのかを具体的に分けて考えましょう。
「妊娠中の仕事」と一括りにしても、デスクワークと立ち仕事では困りやすい場面が違います。
デスクワークの場合
デスクワークは身体的負担が小さいと思われやすいですが、長時間同じ姿勢でいることや、体調が悪くてもパソコンに向かい続けることが負担になる場合があります。
また、強い眠気やだるさによって集中力が続きにくくなり、妊娠前と同じ量の仕事をこなそうとすると長時間労働につながることもあります。
仕事を小さく区切る、適宜休憩する、重要な判断が必要な仕事を比較的体調のよい時間帯に行うなど、自分の体調の波に合わせて仕事の組み方を変える方法があります。
長時間のオンライン会議が続く場合も、途中で休憩を取れるスケジュールにできないか検討しましょう。
立ち仕事・接客業の場合
販売や飲食などの接客業では、「お客様の前なので座れない」「忙しい時間帯はトイレに行きづらい」といった問題が起こりやすくなります。
まず確認したいのは、一日のうち特につらい時間帯と作業です。
たとえば、レジに連続して2時間立つことがつらいのであれば、レジ業務そのものをすべて外れるのではなく、30分ごとに別の作業と交代する方法が考えられます。
また、においによって吐き気が強くなる場合は、食品や香料など特定の売り場・作業から一時的に離れられないか相談する方法もあります。
身体を使う仕事の場合
介護、保育、医療、物流、製造、建設などでは、持ち上げる、しゃがむ、移動するなど身体を使う作業があります。
ここでは「妊婦だからすべて禁止」と自己判断するのではなく、実際にどの作業をどの程度行っているのかを整理することが重要です。
たとえば介護職なら利用者の移乗、保育職なら子どもの抱き上げ、物流なら荷物の運搬など、負担となる作業を具体的に医師等へ伝えます。
なお、労働基準法などでは妊産婦等について一定の危険有害業務への就業制限が定められており、重量物を取り扱う業務なども規制の対象となる場合があります。自分の業務が該当するかは仕事内容や条件によって判断が必要なため、会社の安全衛生担当者や人事、必要に応じて労働局等へ確認してください。
営業・外回り・出張が多い場合
営業職では、オフィス内の仕事より移動が負担になる場合があります。
訪問先を一日に何件も詰め込んでいる、電車で長距離移動する、地方出張が多いといった場合は、体調が悪くなったときにすぐ休めないこともあります。
訪問件数を減らす、オンライン商談へ切り替える、遠方への出張を別の担当者へ変更するなど、業務を部分的に調整できないか相談してみましょう。
また、外回り中に体調が悪くなった場合の連絡先や、その日の予定を誰が引き継ぐのかも決めておくと安心です。
夜勤・シフト勤務の場合
医療、介護、宿泊、警備、製造などでは夜勤を含むシフト勤務があります。
夜勤を続けることに不安がある場合は、次回シフトが確定する前に上司へ相談することが重要です。
妊産婦が請求した場合の深夜業等の制限については法律上の仕組みがあります。「職場に迷惑がかかるから夜勤を抜けられない」と一人で決めず、人事へ利用方法を確認してください。
妊娠初期の通勤がつらいときはどうする?
妊娠初期は仕事そのものを続けられても、満員電車や長距離移動などの通勤が負担になることがあります。
「会社に着けば働けるのだから問題ない」と考えず、通勤も含めて一日の仕事と考えましょう。
通勤そのものが大きな負担になることもある
まず、通勤の何がつらいのかを分けて考えます。
- 朝の特定の時間帯に吐き気が強い
- 満員電車で長時間立つのがつらい
- においや人混みで気分が悪くなる
- 途中でトイレへ行きたくなる
- 乗り換えが多い
- 駅から会社まで歩く距離が長い
原因によって対策は異なります。朝の時間帯だけが問題なら時差通勤が役立つ可能性がありますが、移動そのものが難しいのであれば、単に30分遅らせるだけでは解決しないこともあります。
時差出勤・勤務時間変更などを相談する
医師等から通勤緩和について指導を受けた場合には、その内容を会社へ伝えて必要な措置を申し出ます。
厚生労働省は母性健康管理措置の例として、妊娠中の通勤緩和や休憩に関する措置、症状等に対応した作業制限、勤務時間短縮、休業などを示しています。
「電車がつらいので何とかしてください」と伝えるより、「8時台の混雑時に症状が強く、途中下車することがある」など具体的に説明すると、会社側も対応方法を検討しやすくなります。
テレワークが利用できる場合は会社に確認する
勤務先にテレワーク制度がある場合は、通勤負担を減らす選択肢になることがあります。
ただし、テレワークはすべての妊娠中の労働者に一律に認められる制度というわけではありません。会社の就業規則や利用条件を確認してください。
また、在宅勤務になれば体調の問題がすべて解決するわけでもありません。自宅でも長時間働き続ければ負担になります。休憩を取る、終業時間を守るなど、働き方そのものも合わせて見直しましょう。
妊娠初期の体調不良は会社にどう相談する?
会社へ相談するときは、症状を細かく説明することより、「仕事のどの場面に影響していて、何について相談したいのか」を伝えることが重要です。
「つらい」ではなく仕事への影響を伝える
上司へ相談するときに、「つわりがつらいです」だけでは、上司も具体的に何を調整すればよいか分からない場合があります。
たとえば次のように整理します。
- 午前中に吐き気が強く、始業時刻に間に合わないことがある
- 1時間以上立ち続けることが難しい
- 夕方になると体調が悪くなり残業が難しい
- においの強い作業で吐き気が出る
- 健診のため平日の日中に通院する必要がある
そのうえで、「始業時刻を相談したい」「担当業務を一時的に見直したい」など、困っていることを伝えます。
医学的な判断が必要な場合は、自分で必要な措置を決めるのではなく、医師等へ相談してください。
まだ職場全体に妊娠を伝えたくない場合
妊娠初期では、「上司には相談したいけれど、同僚にはまだ知られたくない」ということもあります。
その場合は、上司へ妊娠を報告するときに共有範囲についても希望を伝えましょう。
「現時点では上司と人事担当者までの共有にしたい」「業務調整に必要な人へ伝える場合は事前に相談してほしい」といった形です。
勤務上必要な調整を相談することと、職場全員へ妊娠を公表することは分けて考えることができます。
欠勤や遅刻が増える前に相談する方法もある
体調不良が続きそうだと感じた段階で相談しておくことも一つの方法です。
毎朝「今日は遅刻します」「今日は休みます」と連絡する状態が続くと、本人も連絡すること自体が精神的な負担になってしまいます。
一定期間だけ始業時間を見直せるか、業務量を調整できるかなどを事前に話しておけば、毎日の対応を減らせる場合があります。
ただし、会社独自の時差出勤制度と、医師等の指導に基づく母性健康管理措置は必ずしも同じ扱いではありません。勤怠や給与への影響を含め、どの制度を利用することになるのか人事へ確認しておきましょう。
妊娠中に利用できる仕事上の制度・措置を知っておこう
妊娠中の働き方には、健診時間の確保や医師等の指導に基づく措置、軽易業務への転換、時間外労働等の制限など、法律上の仕組みがあります。
「会社にお願いして特別扱いしてもらうもの」と考えず、必要な場合に利用できる仕組みとして知っておきましょう。
妊婦健診などを受けるための時間確保
男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置として、事業主は、妊娠中や出産後の女性労働者が保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにする必要があります。
健診日が平日の日中になった場合に、「仕事があるから受診できない」と自己判断で先延ばしにせず、会社へ必要な時間について申し出ましょう。
なお、その時間を有給扱いとするかなど、給与の取扱いについては会社の制度によって異なる場合があります。就業規則や人事への確認が必要です。
医師等の指導に基づく母性健康管理措置
妊婦健診などで医師や助産師から勤務について指導を受けた場合、事業主はその指導事項を守るために必要な措置を講じることが求められます。
厚生労働省が示している措置には、通勤緩和、休憩に関する措置のほか、症状に応じた作業の制限、勤務時間の短縮、休業などがあります。
どの措置が必要なのかは症状や仕事内容によって異なります。自分で「時短勤務が必要」と決めるのではなく、医師等へ仕事内容を伝えたうえで相談することが重要です。
母健連絡カードで会社に伝える
医師等から受けた指導を会社へ正確に伝えるために利用できるのが、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)です。
母健連絡カードには、主治医等が必要と判断した通勤緩和、休憩、勤務時間短縮、作業制限などの指導事項を記載します。
労働者から母健連絡カードが提出された場合、事業主は記載された指導内容に応じて適切な措置を講じる必要があります。 (https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001082610.pdf)
母健連絡カードの最新様式は厚生労働省が公開しています。実際に利用する際は、最新の公式情報を確認してください。
軽易な業務への転換
妊娠中の女性が請求した場合、使用者は他の軽易な業務へ転換させなければならないことが労働基準法で定められています。(https://www.mhlw.go.jp/content/001345146.pdf)
たとえば身体的負担の大きい作業を担当している場合に、負担の小さい業務へ変更できないか会社へ相談することが考えられます。
ただし、どの仕事を軽易な業務として扱うかは職場の業務内容によって異なります。「妊娠したので仕事を減らしてほしい」だけでなく、現在どの作業が負担になっているのかを具体的に整理して相談しましょう。
時間外労働・休日労働・深夜業の制限
妊産婦が請求した場合、使用者は時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはならないと労働基準法で定められています。また、変形労働時間制が採用されている場合にも、請求により法定労働時間を超える労働を制限する仕組みがあります。 (https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/faq/faq05.html)
「妊娠したら会社が自動的に残業を禁止してくれる」とは限らない点には注意しましょう。本人からの請求が前提となる制度があります。
残業や夜勤を減らしたい場合は、上司だけでなく人事にも申請方法を確認してください。
妊娠初期に仕事を休む・働き方を変える判断はどうする?
仕事を休むべきか迷ったときは、インターネット上の「妊娠初期ならこれくらい働ける」という情報だけで判断せず、自分の症状と仕事内容を医師等へ伝えて相談しましょう。
自分だけで「まだ働ける」と判断し続けない
責任感が強い人ほど、「もう少し頑張れる」「この仕事だけ終わらせてから」と無理を続けてしまうことがあります。
しかし、仕事を続けられるかどうかを判断するときに重要なのは、仕事への責任だけではありません。
症状が強くなっている、食事や水分を十分に取れない、通勤すること自体が難しくなっているなど、健康面で気になることがあれば医療機関へ相談してください。
緊急性のある症状や受診の目安については、この記事で一律に判断することはできません。いつもと違う症状や強い不安がある場合は、勤務よりも医療機関への相談を優先してください。
医師等に仕事内容まで具体的に伝える
医師等へ相談するときに「仕事をしています」とだけ伝えるより、仕事内容まで説明した方が勤務上の指導を受けやすくなります。
- 一日何時間勤務しているか
- 通勤にどのくらい時間がかかるか
- 立ち仕事かデスクワークか
- 重量物を扱うか
- 夜勤があるか
- 残業がどの程度あるか
- 休憩を自由に取れるか
- 出張や長距離移動があるか
たとえば「介護職です」だけでは、デスクワーク中心なのか、利用者の移乗を頻繁に行うのか分かりません。
具体的な勤務状況を説明することで、医師等も現在の仕事について必要な指導を検討しやすくなります。
働き方は途中で変更してもよい
妊娠初期に「産休までフルタイムで働く」と考えていたとしても、その予定を最後まで守らなければならないわけではありません。
妊娠中は体調や妊娠経過によって状況が変化します。
最初は通常勤務を続け、その後つわりが強くなったため勤務時間を調整することもあります。反対に、一時的に勤務を調整した後、体調や医師等の指導内容を踏まえて再び働き方を見直すこともあります。
会社との相談も一度で終わらせず、必要に応じて見直すことを前提にすると、「最初から完璧な働き方を決めなければ」という負担を減らせます。
妊娠初期でも仕事を続けやすくするための準備
妊娠初期からできる仕事上の準備は、「産休の引き継ぎ」ではなく、急に休んでも周囲が最低限対応できる状態を作ることです。
自分しか分からない仕事を減らしておく
担当している案件について、進捗や次に必要な対応を簡単に記録しておきましょう。
特に、本人しか知らない取引先との約束や、個人のパソコン内にしかない資料があると、急に休んだときに周囲が対応できなくなります。
共有フォルダへ資料を整理する、案件管理ツールを更新する、上司へ進捗を伝えるなど、普段の業務管理を少し丁寧にするだけでも十分です。
まだ妊娠初期で産休まで長い場合に、すべての担当業務を手放す必要はありません。「今日休んでも、緊急案件の場所だけは誰かが分かる」という状態を目指しましょう。
体調が悪くなったときの連絡方法を決める
急な欠勤や遅刻をする場合の連絡先と方法も確認しておきます。
直属の上司へ電話するのか、チャットで連絡するのか、始業何分前までに伝える必要があるのかを把握しておけば、体調が悪い朝に慌てずに済みます。
また、自分が休んだ場合に「今日必ず対応しなければならない仕事」を誰へ伝えるのかも決めておくと安心です。
予定を詰め込みすぎない
妊娠前と同じ感覚で予定を詰めると、体調が悪くなったときに調整できる余地がなくなります。
たとえば、午前から夕方まで会議を連続させない、外回りの件数を減らす、重要な締切を同じ日に集中させないなど、余白を作ることを意識します。
特に「体調がよい日に翌日分まで取り戻そう」と無理をすると、長時間勤務につながることがあります。
その日にできる範囲で働き、できなかった仕事をどのように調整するかを上司と相談できる状態を作ることが、妊娠中も仕事を続けるうえで重要です。
妊娠初期の仕事についてよくある質問
妊娠初期は仕事を休んだ方がいいですか?
妊娠初期だから一律に仕事を休む必要があるとはいえません。
通常勤務できる人もいれば、症状や妊娠経過によって勤務調整や休業が必要になる人もいます。
「妊娠○週だから働いて大丈夫」といった週数だけの判断は避け、体調に不安がある場合は医師等へ仕事内容も伝えて相談してください。医師等から休業や勤務時間の変更などの指導を受けた場合は、その内容を会社へ伝えます。
つわりで遅刻や欠勤をしても大丈夫ですか?
体調不良で出勤できない場合は、まず勤務先の欠勤・遅刻の連絡ルールに従って連絡します。
一方、つわりによる遅刻や欠勤が繰り返されている場合は、毎回当日対応するだけでなく、医師等への相談や会社との勤務調整を検討しましょう。
なお、妊娠・出産に起因する症状や母性健康管理措置の利用などを理由とする不利益な取扱いについては、男女雇用機会均等法上の規制があります。
立ち仕事はいつまで続けられますか?
「妊娠○週までなら立ち仕事をしてよい」と一律に決めることはできません。
連続して立つ時間、仕事内容、体調、妊娠経過などによって負担は異なります。
立っていることがつらくなった場合は、休憩を増やす、座ってできる作業を組み合わせるなどの方法を会社へ相談します。医学的な判断が必要な場合は医師等へ相談し、指導を受けた場合は母健連絡カード等を使って会社へ伝えることもできます。
妊娠初期でも残業を断れますか?
妊産婦が請求した場合、使用者は時間外労働や休日労働、深夜業をさせてはならないと労働基準法で定められています。 (母性ナビ)
妊娠初期も対象となります。
利用したい場合は、勤務先の人事・労務へ具体的な申請方法を確認しましょう。
会社に妊娠を言わずに勤務調整できますか?
会社独自のフレックスタイムやテレワーク、有給休暇などを通常の制度として利用できる場合は、必ずしも妊娠を理由として申請する必要がないこともあります。
一方、妊娠を理由とした軽易業務への転換や、医師等の指導に基づく母性健康管理措置などを利用する場合は、会社側が妊娠していることや必要な措置を把握する必要があります。
「職場全員に妊娠を知られること」と「制度を利用するため必要な担当者へ伝えること」は別です。まだ広く知らせたくない場合は、上司や人事へ共有範囲について相談しましょう。
まとめ|妊娠初期は「これまでと同じ働き方」を続ける必要はない
妊娠初期に仕事を続けるときに大切なのは、無理に妊娠前と同じ働き方を維持することではありません。
通常勤務を続けられる日もあれば、通勤だけでつらい日、休憩を増やしたい日、仕事を休む必要がある日もあります。妊娠初期の体調には個人差があり、同じ人でも日によって状態が変わることがあります。
まずは、通勤、勤務時間、休憩、仕事内容、残業・夜勤などを分けて、「自分はどの場面で負担を感じているのか」を整理してみましょう。
勤務上の調整が必要な場合には、上司や人事へ具体的な状況を伝えます。医師等から勤務について指導を受けた場合は、母健連絡カードを利用して内容を会社へ伝える方法があります。また、軽易な業務への転換や、時間外労働・休日労働・深夜業の制限など、法律上利用できる仕組みもあります。
そして、体調について「これくらいなら我慢できる」と仕事だけを基準に判断しないことも重要です。症状や妊娠経過について気になることがあれば、医師や助産師などへ相談してください。
妊娠中の働き方は、一度決めたら産休まで変更できないものではありません。その時点の体調に合わせて仕事を調整しながら、安全に働き続けられる方法を会社と一緒に考えていくことが大切です。





