妊娠初期の通勤がつらいときは、「仕事はできるから」と無理に今までと同じ通勤を続ける必要はありません。満員電車や長時間の移動が負担になっている場合は、時差出勤、勤務時間の短縮、通勤経路の変更などについて会社へ相談できる場合があります。
妊娠初期は、吐き気や強い眠気、だるさなどによって、それまで問題なくできていた通勤が急につらく感じられることがあります。会社に着けば仕事ができるのに、「朝の電車に乗ることが一番つらい」という人もいるでしょう。
そのような場合に、「妊娠したのだから仕方がない」「会社に迷惑をかけたくない」と我慢を続けるのではなく、仕事と通勤を分けて考えることが大切です。仕事そのものを休まなくても、通勤方法や勤務開始時間を変えることで負担を軽減できる可能性があります。
また、妊娠中の通勤については、単なる会社の配慮だけではなく、男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置があります。医師や助産師から通勤緩和について指導を受けた場合、本人からの申出に応じて、事業主には指導事項を守るために必要な措置を講じることが求められています。
この記事では、妊娠初期の通勤がつらい人に向けて、自分で見直せるポイント、会社へ相談できる対策、通勤緩和の制度、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)の使い方、上司への伝え方まで順番に解説します。
妊娠初期の通勤がつらいときは我慢せず会社へ相談できる
妊娠初期の通勤がつらくなったら、「会社まで行けるかどうか」だけで判断せず、通勤によってどれだけ身体に負担がかかっているかを確認しましょう。
妊娠前には当たり前だった通勤でも、妊娠後は同じようにできるとは限りません。たとえば、これまで30分程度なら問題なく立って電車に乗れていた人でも、妊娠後は途中で気分が悪くなり、何度も電車を降りなければならなくなることがあります。
朝は吐き気が強いものの、昼ごろになると比較的落ち着く人もいます。その場合、「8時台の満員電車には乗れないけれど、10時なら出勤できる」ということもあるでしょう。
この状態を「仕事ができない」と一括りにしてしまうと、欠勤するか無理して通常通り出勤するかの二択になってしまいます。しかし、実際に負担になっているのが通勤時間帯であれば、出勤時刻を変えることで働ける可能性があります。
厚生労働省は、妊娠中の女性労働者が医師等から通勤緩和について指導を受けた場合の措置として、時差出勤、勤務時間の短縮、混雑の少ない通勤経路への変更などを示しています。
また、医師等から具体的な指導を受けていない場合でも、厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」では、通勤状況や健康状態によって必要があれば、通勤緩和や休憩時間の変更等について申し出ることが案内されています。
「まだ休むほどではない」と感じている段階でも、通勤が日常的な負担になっているのであれば、まずは会社へ相談することを検討しましょう。
まず「通勤の何がつらいのか」を整理する
会社へ相談する前に、「通勤がつらい」という状態をもう少し具体的にしておくことが重要です。問題となっている場面が分かれば、必要な対策も考えやすくなります。
満員電車や長時間立つことがつらい
電車やバスで通勤している場合、混雑そのものが大きな負担になることがあります。
座れないことだけでなく、人との距離が近い、車内が暑い、においが気になる、途中で体調が悪くなってもすぐに降りられない、といった複数の要因が重なることがあります。
たとえば、「通勤時間は40分だからそれほど長くない」と思っていても、その40分を毎朝混雑した電車で立って過ごしているのであれば、妊娠後は負担の感じ方が変わることがあります。
会社へ相談するときは、「満員電車がつらいです」だけではなく、「8時ごろの電車では30分ほど立つことが多く、途中で気分が悪くなって降りることがあります」と具体的に説明すると状況が伝わりやすくなります。
朝の時間帯に症状が強くなる
仕事中は比較的問題がなくても、朝に吐き気などの症状が強くなり、決まった始業時刻に合わせて家を出ることが難しい場合があります。
この場合に確認したいのは、「一日中働けないのか」「朝の一定時間だけが特につらいのか」です。
たとえば、9時始業に間に合わせるためには7時30分に家を出なければならず、その時間帯は体調が悪い。一方、9時ごろまで自宅で休めば外出できるというケースでは、時差出勤によって負担を減らせる可能性があります。
毎朝無理に通常時刻へ合わせ、途中下車を繰り返した結果、会社へ着いた時点で疲れ切ってしまうのであれば、出勤時間を含めた働き方を見直す余地があります。
症状について不安がある場合や、仕事を続けてよいか迷う場合には、勤務調整だけで判断せず医師等へ相談してください。
乗り換えや長時間通勤で消耗する
通勤負担は「満員電車かどうか」だけではありません。複数回の乗り換え、長い階段、駅構内の移動、バスを待つ時間など、一連の移動が負担になることもあります。
たとえば、自宅から会社まで片道1時間かかり、電車を3回乗り換える場合、乗車時間そのものより、乗り換えのたびに歩いたり階段を移動したりすることがつらくなることがあります。
その場合は、多少時間や運賃が変わっても乗り換え回数の少ない経路を利用できないか検討する方法があります。
会社から通勤経路の指定を受けている場合や通勤手当の変更が必要になる場合は、自己判断で長期的に変更する前に担当者へ確認しましょう。
出勤した時点で仕事をする余力がなくなる
「会社には行けているから大丈夫」と考えがちですが、会社へ着いた後の状態も重要です。
通勤だけで体力を使い切り、始業後しばらく休まなければ仕事ができない、昼まで体調が戻らない、帰宅するための体力を残すことばかり考えているという状態なら、現在の通勤方法が負担になっていないか見直しましょう。
通勤は仕事そのものではありませんが、働き続けるためには毎日往復する必要があります。そのため、「業務はできるか」だけではなく、自宅を出てから帰宅するまでを一つの生活サイクルとして考えることが大切です。
自分でできる通勤負担の減らし方
会社の制度を利用する前にも、通勤時間帯や経路などを見直すことで負担を減らせる場合があります。ただし、体調が悪い場合に自己流の対策だけで乗り切ろうとせず、必要に応じて医師等へ相談してください。
混雑する時間帯・車両・経路を見直す
同じ路線でも、利用する時間や車両によって混雑状況が異なることがあります。
少し早い電車や遅い電車に変える、比較的空いている車両を利用する、乗り換え回数の少ない経路を選ぶなど、自分の通勤環境で変更できることがないか確認してみましょう。
ただし、「混雑を避けるために毎日1時間早く家を出る」といった方法が、かえって睡眠時間を減らしてしまうこともあります。混雑だけでなく、起床時間や帰宅時間を含めて負担が軽くなるかを考えることが重要です。
通勤経路を正式に変更する場合は、通勤手当や会社への届出に影響することがあるため、勤務先のルールも確認してください。
余裕を持った通勤スケジュールに変える
妊娠前と同じ「最短時間」での通勤を続けることが負担になる場合もあります。
途中で体調が悪くなったときに一度電車を降りても間に合うようにする、乗り換え時に急がなくてもよい時間を確保するなど、時間に余裕を持たせることで心理的な負担を減らせることがあります。
一方、余裕を持たせるために極端に早く起きなければならないのであれば、個人の工夫だけでは限界があります。その場合は、始業時間そのものを変更できないか会社へ相談する方が現実的です。
「自分がもっと頑張れば通常時刻に間に合う」と考えるのではなく、毎日継続できる方法かどうかを基準に考えましょう。
「毎日同じ方法で出勤する」にこだわらない
妊娠中は日によって体調が変わることがあります。そのため、「昨日できたから今日もできる」とは限りません。
会社にフレックスタイムやテレワークなどの制度がある場合、体調や業務内容に応じて利用できないか確認してみましょう。
たとえば、出社が必要な業務を特定の曜日へまとめ、それ以外は会社のテレワーク制度を利用するといった方法が可能な職場もあります。
ただし、妊娠したことだけを理由にすべての会社でテレワークを利用できるわけではありません。フレックスやテレワークは会社独自の制度や業務内容によって利用条件が異なるため、勤務先へ確認してください。
会社に相談できる通勤対策
個人の工夫だけでは通勤負担を減らせない場合は、勤務時間や通勤方法について会社へ相談しましょう。通勤緩和として考えられる具体策には、時差出勤、勤務時間の短縮、通勤経路の変更などがあります。厚生労働省の2026年の資料でも、これらが通勤緩和の具体例として示されています。
時差出勤でラッシュを避ける
通勤ラッシュが大きな原因になっている場合、最も分かりやすい対策の一つが時差出勤です。
たとえば、通常9時始業の会社で、始業と終業を後ろへずらし、混雑が落ち着いた時間帯に出勤するといった方法が考えられます。
厚生労働省の資料では、通勤緩和の具体例として、始業・終業時刻にそれぞれ30~60分程度の時間差を設けることや、フレックスタイム制を適用することなどが挙げられています。これは一律に「必ず30分ずらせる」という意味ではなく、実際の措置は健康状態や通勤事情などを踏まえて決められます。
相談するときは、「時差出勤したいです」だけではなく、「8時台の電車で体調が悪くなるため、ラッシュを避けられる時間に変更できないでしょうか」と理由を具体的にすると、必要な調整が伝わりやすくなります。
勤務時間を短縮する
出勤時間をずらすだけでは負担を減らせない場合、勤務時間そのものを短くする措置が必要になることもあります。
厚生労働省の通勤緩和に関する資料では、勤務時間短縮の例として1日30~60分程度の短縮が示されています。ただし、これは個別の状況を考える際の例であり、すべての人に同じ時間短縮が適用されるという意味ではありません。
たとえば、朝の混雑を避けるため始業を遅らせる一方、終業時刻は変えず、結果として勤務時間を短縮するといった対応が考えられます。
勤務しなかった時間の賃金をどのように扱うかは別途確認が必要です。勤務時間短縮を利用する場合には、制度上の取扱いや給与への影響を人事・労務へ確認してから利用しましょう。
通勤経路や交通手段を変更する
混雑している路線を避けたり、乗り換え回数の少ない経路へ変更したりする方法もあります。
厚生労働省は、通勤緩和の具体例として混雑の少ない通勤経路への変更を挙げています。また、通勤緩和の対象は電車やバスなどの公共交通機関だけに限られず、自家用車による通勤も対象になると案内しています。
ただし、会社へ届け出ている通勤経路を変更すると、通勤手当や労災上の通勤経路の確認などに関係する場合があります。長期的に変更する場合は、会社へ相談したうえで進めましょう。
会社独自のフレックス・テレワークも確認する
法律上の母性健康管理措置とは別に、勤務先にフレックスタイムやテレワーク、時差出勤制度が用意されている場合があります。
特に「仕事内容は問題ないが通勤だけがつらい」という場合、テレワークを利用できれば通勤そのものを減らせる可能性があります。
一方で、接客、医療、介護、製造など出社が必要な職種ではテレワークが難しいこともあります。その場合は、時差出勤や勤務時間短縮など別の方法を検討します。
一つの制度だけにこだわらず、「自分が困っていること」を会社へ伝えたうえで、利用できる方法を一緒に確認するとよいでしょう。
妊娠中の「通勤緩和」は母性健康管理措置の一つ
妊娠中の通勤緩和は、単なる会社の善意による対応ではなく、男女雇用機会均等法に基づく母性健康管理措置として位置づけられています。
妊娠中・出産後の女性労働者が健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合、事業主はその指導事項を守れるよう、勤務時間の変更や勤務の軽減など必要な措置を講じなければなりません。厚生労働省は、その具体的な措置として「妊娠中の通勤緩和」「妊娠中の休憩」「妊娠中または出産後の症状等への対応」を示しています。
医師等から通勤緩和の指導を受けた場合
通勤時の混雑が健康保持に影響するとして医師または助産師から通勤緩和の指導を受け、その旨を本人が申し出た場合、事業主は必要な通勤緩和措置を講じることが求められます。
具体的には、時差出勤、勤務時間の短縮、混雑の少ない経路への変更などが考えられます。
大切なのは、「妊娠しているから好きな時間に出勤できる」という制度ではないことです。医師等の指導内容や本人の健康状態、通勤事情を踏まえて、必要な措置を会社と調整します。
通勤がつらい状態が続いている場合は、次の妊婦健診などで「朝の通勤について相談したい」と医師等へ伝えてみましょう。
医師等から具体的な指導がない場合
「母健連絡カードがなければ会社には何も相談できない」と考える必要はありません。
厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」では、医師等から特に指導がない場合でも、通勤状況や健康状態によって必要があれば、通勤緩和や休憩時間の変更などを申し出るよう案内しています。
たとえば、「最近、朝の満員電車で途中下車することが増えたので、まず時差出勤について相談したい」と上司へ伝えることはできます。
そのうえで会社から医師等の指導内容を確認するよう求められたり、本人自身が健康上の判断に迷ったりした場合には、医師等へ相談します。
制度を使えるかどうかを自分だけで判断して諦めるのではなく、まず困っている状況を相談することが第一歩です。
正社員以外も対象になる
母性健康管理措置は、正社員だけの制度ではありません。
妊娠中・出産後の女性労働者に対する母性健康管理措置は、雇用形態だけを理由に対象外になるものではありません。パート・アルバイトや有期雇用の労働者であっても、対象となる女性労働者には必要な措置が求められます。
そのため、「パートだから時差出勤について相談できない」「契約社員だから母健連絡カードは使えない」と最初から諦める必要はありません。
ただし、会社独自のフレックスタイムやテレワーク制度については、雇用形態や職種によって利用条件が設定されていることがあります。法律上の母性健康管理措置と会社独自制度を分けて確認しましょう。
母健連絡カードを使って会社へ伝える方法
医師等から通勤について指導を受けた場合、その内容を会社へ正確に伝える方法として「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」があります。
母健連絡カードとは
母健連絡カードは、妊娠中・出産後の女性労働者が、医師や助産師から受けた健康上の指導内容を勤務先へ伝えるためのものです。
通勤緩和だけでなく、休憩、勤務時間への配慮、作業の制限など、勤務上必要な措置について医師等の指導事項を伝えるために利用できます。
厚生労働省は、女性労働者から母健連絡カードが提出された場合、事業主は記載された内容に応じて適切な措置を講じる必要があると案内しています。
「上司へ体調をうまく説明できない」「どの程度勤務を変えればよいか自分では分からない」という場合にも、医師等の指導内容を会社と共有する手段になります。
受診時には実際の通勤状況を具体的に伝える
医師等へ相談するときは、「通勤がつらいです」とだけ伝えるのではなく、実際の通勤状況を説明しましょう。
たとえば、次のような情報を整理しておくと伝えやすくなります。
- 自宅から会社までの片道の通勤時間
- 利用している交通手段
- 乗り換え回数
- 混雑している時間帯
- 電車やバスで立っている時間
- 通勤中に起きている症状や困りごと
- 途中下車や遅刻がどの程度発生しているか
- 会社の始業・終業時刻
厚生労働省も、健康診査等で仕事に関する指導を受ける際には、職務内容や職場の状況を医師等へ説明することを案内しています。
たとえば「片道50分で、8時台はほぼ座れません。最近は途中で気分が悪くなり、週に何度か電車を降りています」と伝えれば、通勤の負担を具体的に理解してもらいやすくなります。
会社へ提出した後の流れ
母健連絡カードに医師等から指導事項を記載してもらったら、会社の上司や人事・労務など指定された窓口へ提出します。
その内容をもとに、時差出勤や勤務時間の変更など、必要な対応を会社と確認します。
たとえば「ラッシュを避ける必要がある」という指導であれば、始業時刻を変更するのか、勤務時間を短縮するのか、通勤経路を変えるのかなど、具体的な方法を決めていきます。
厚生労働省の最新資料では、事業主が措置を決定した場合、その内容を速やかに女性労働者へ明示することとし、書面による明示が望ましいとされています。
体調が変わり、当初の措置では対応できなくなった場合は、そのまま我慢せず再度医師等や会社へ相談しましょう。
上司にはどう相談する?伝える内容と会話例
会社への相談では、「妊娠して通勤がつらい」という事実だけでなく、いつ・どの場面で困っていて、何を相談したいのかをセットで伝えると話が進みやすくなります。
相談前に4つの情報を整理する
上司へ相談する前に、次の4点を簡単にメモしておきましょう。
- 現在妊娠していること
- 通勤のどの場面がつらいか
- 仕事そのものにはどの程度影響しているか
- どのような調整を相談したいか
たとえば、「朝の通勤だけが難しく、出社後は通常勤務できる」という状態と、「通勤後も一日中体調が戻らない」という状態では、必要な対応が異なります。
前者なら時差出勤が解決策になる可能性がありますが、後者なら勤務時間や仕事内容まで見直した方がよいかもしれません。
希望する方法を一つ決めておくのはよいですが、「必ずこの方法でなければならない」と限定しすぎず、困っている状況を伝えたうえで会社と調整しましょう。
時差出勤を相談する場合の伝え方
たとえば、次のように伝えることができます。
「妊娠していることが分かり、最近、朝の満員電車で体調が悪くなることが増えています。出社後は比較的問題なく仕事ができているのですが、8時台の通勤がかなり負担になっています。ラッシュを避けるため、しばらく出勤時間をずらすことができないか相談させていただきたいです。」
すでに医師等から通勤緩和について指導を受けている場合は、「医師からも通勤時間について調整するよう指導を受けています」と続け、その内容を会社へ伝えます。
母健連絡カードがある場合は、「母健連絡カードを提出したいのですが、提出先を教えていただけますか」と確認するとよいでしょう。
まだ妊娠を広く知られたくない場合
妊娠初期の場合、「上司には相談したいけれど、同僚全員にはまだ伝えたくない」と考えることもあります。
その場合は、通勤について相談するときに情報共有の範囲も伝えておきましょう。
たとえば、「勤務調整のため上司と人事への共有は問題ありませんが、現時点ではチーム全体への公表は控えたいと考えています」と伝えます。
時差出勤などを始めると、周囲から理由を聞かれる可能性があります。その際にどのように説明するかについても、「体調面の理由として伝える」など上司と認識を合わせておくと安心です。
業務上必要な情報共有が生じる場合もあるため、誰にどこまで共有する必要があるのかを会社と相談しましょう。
通勤を調整してもつらい場合は仕事全体を見直す
時差出勤などで通勤を調整しても体調が改善しない場合は、「通勤だけ」の問題と決めつけず、勤務時間や仕事内容を含めて見直しましょう。
休憩や仕事内容も調整する
朝の混雑を避けられるようになっても、仕事中に体調が悪くなるのであれば、休憩の取り方や仕事内容について相談する必要があるかもしれません。
母性健康管理措置には、通勤緩和だけでなく、休憩時間の延長・回数の増加、症状等に応じた作業の制限、勤務時間の短縮、休業なども含まれます。
たとえば、時差出勤によって朝は楽になったものの、午後になると長時間立つことが難しいのであれば、立ち仕事の時間を減らすなど別の調整が必要になる可能性があります。
「一度会社にお願いしたから、これ以上相談するのは申し訳ない」と考える必要はありません。体調や医師等の指導内容が変われば、必要な措置も変わることがあります。
遅刻・欠勤を繰り返す前に再相談する
毎朝出勤できるか分からず、その都度上司へ遅刻や欠勤の連絡をする状態が続いているなら、働き方そのものを見直すタイミングかもしれません。
たとえば、週に何度も「今日は30分遅れます」と連絡するより、一定期間の時差出勤について正式に相談した方が、本人にも職場にも予定が分かりやすくなる場合があります。
また、出勤できても毎日途中下車している、通勤後に長時間休まなければ仕事を始められないといった状態なら、その状況を医師等にも伝えましょう。
勤務を続けてよいか、どの程度の調整が必要かについて医学的な判断が必要な場合は、会社だけで判断せず医師等へ相談してください。
医師等から休業を指導された場合
症状によっては、通勤時間を変更するだけではなく、一定期間仕事を休むよう医師等から指導される場合があります。
その場合は、「時差出勤なら何とかできる」と自己判断で指導内容を変えるのではなく、医師等の指導を会社へ伝え、必要な措置について相談しましょう。
母性健康管理措置として、症状等に対応するための作業制限、勤務時間短縮、休業などが必要になることがあります。厚生労働省の労働局Q&Aでも、母健連絡カードの内容に応じて事業主が通勤緩和、作業制限、休業等の措置を講じることが案内されています。
休業中や勤務時間短縮中の賃金の取扱いは、利用する制度や会社の規定によって異なるため、人事・労務へ確認してください。
妊娠初期の通勤についてよくある質問
妊娠しただけで時差出勤を利用できる?
妊娠したことだけで、すべての会社において自動的に希望する時差出勤が適用されるわけではありません。
一方、医師等から通勤緩和について指導を受け、その旨を本人が申し出た場合には、事業主は時差通勤や勤務時間短縮など必要な措置を講じることが求められます。
また、医師等から具体的な指導がなくても、通勤状況や健康状態によって必要があれば会社へ通勤緩和を申し出ることが厚生労働省から案内されています。
まずは会社へ現在の通勤状況を相談し、必要に応じて医師等へ相談するとよいでしょう。
通勤緩和で勤務時間を短縮すると給料は減る?
勤務時間を短縮した時間について、必ず通常通りの給与が支払われるとは限りません。
厚生労働省の労働局Q&Aでも、勤務時間の短縮や休憩・休業によって実際に勤務しなかった時間分の賃金については、労使間で話し合って決めることが望まれると案内されています。
会社によっては有給扱いとなる独自制度がある一方、勤務しなかった時間を無給として扱う規定の場合もあります。
時差出勤で勤務時間自体が変わらない場合と、勤務時間を短縮する場合でも取扱いは異なります。利用前に就業規則や人事・労務へ確認しましょう。
会社に妊娠報告する前でも相談できる?
通勤緩和など妊娠に伴う具体的な勤務調整を求める場合、少なくとも対応する上司や人事など必要な担当者には妊娠していることを伝える必要が出てきます。
ただし、「会社へ伝える=その日に職場全体へ公表する」という意味ではありません。
まだ同僚には知らせたくない場合は、「勤務調整に必要な担当者までの共有にしたい」と相談する方法があります。
体調の問題ですでに通勤が難しくなっているのであれば、「安定期まで誰にも言わない」と時期だけを基準にするより、必要な相手へ早めに相談することも検討しましょう。
自家用車で通勤している場合も対象?
厚生労働省の2026年の母性健康管理資料では、通勤緩和について、電車・バスなどの公共交通機関だけでなく自家用車による通勤も対象になると明記されています。
たとえば道路の混雑によって長時間運転する必要があり、それが健康上の負担となっている場合などには、医師等へ実際の通勤状況を伝えて相談しましょう。
「電車通勤ではないから通勤緩和とは関係ない」と自己判断する必要はありません。
会社が通勤緩和に対応してくれない場合は?
医師等から指導を受けている場合は、まずその内容が会社へ正確に伝わっているか確認しましょう。口頭だけで伝えている場合は、母健連絡カードを利用する方法があります。
男女雇用機会均等法では、医師等の指導事項を守れるようにするため、事業主に勤務時間の変更や勤務の軽減など必要な措置を講じることが求められています。また、母性健康管理措置を求めたことや措置を受けたことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
社内で相談しても解決しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)など、公的な相談窓口を利用する方法もあります。
制度や相談窓口は変更される可能性があるため、実際に利用する際は厚生労働省や各都道府県労働局の最新情報を確認してください。
まとめ|通勤だけで消耗しているなら働き方を調整しよう
妊娠初期に通勤がつらくなったときは、「会社まで行けているから大丈夫」と我慢を続けるのではなく、通勤そのものを働き方の一部として見直しましょう。
まず確認したいのは、何が負担になっているかです。満員電車なのか、朝の時間帯なのか、長時間立つことなのか、乗り換えなのかによって適した対策は変わります。
個人でできる範囲では、混雑の少ない時間帯や車両、通勤経路を確認したり、途中で休めるよう時間に余裕を持ったりする方法があります。
それでも負担が大きい場合は、時差出勤、勤務時間の短縮、通勤経路の変更などについて会社へ相談しましょう。医師等から通勤緩和について指導を受けた場合には、母性健康管理措置として、事業主に必要な措置を講じることが求められています。
医師等の指導内容を会社へ正確に伝えるためには、母健連絡カードを利用できます。受診するときは「通勤がつらい」とだけ伝えるのではなく、通勤時間、交通手段、混雑状況、途中下車の頻度などを具体的に説明しましょう。
また、時差出勤をしてもつらい場合は、通勤だけではなく勤務時間、休憩、仕事内容まで含めて見直す必要があるかもしれません。
「仕事は続けたいけれど、会社へ行くまでがつらい」という状態なら、仕事そのものを諦める前に、通勤方法を変える余地がないか確認することが大切です。自分だけで対応しきれない場合は、医師等と会社の両方へ状況を伝え、今の体調に合った働き方を相談していきましょう。





